紋章のデザインに関する覚書

注意:紋章の意味や構成は独学での解釈なので、間違っていたとしたらそれとなく教えていただけると嬉しいです。

はじめに

結婚式の飾りとしてオリジナルの紋章と紋章飾りを作りました。

escutcheon

この時、せっかく作るなら立派なものを作ろうということで、いろんな紋章を参考にした上で、自分たちなりの拘りを加えて作りました。

こうして作った紋章は、飾りや招待状や席次表など、様々な場面で活躍し、好評だったと思います。

せっかくなので、紋章を作るときに検討したことを残しておきたいと思います。

 

紋章の規模について

紋章は、その構成要素の規模により小紋章、中紋章、大紋章と分けることが出来ます。

それぞれの特徴は以下の通り。

CC BY-SA 3.0 by  Chatsam

小紋章

エスカッシャン(盾)だけを使った紋章。最もシンプルな構成ですが、盾だけでもいくらでも弄りようがあるので、自分だけのオリジナル紋章が作れます。

CC BY-SA 3.0 by  SanchoPanzaXXI

中紋章

エスカッシャンと、その上部のクラウンやヘルメットなど少数の要素で構成されています。何かアクセントが欲しい時に加えてみるのもいいかもしれません。

CC BY-SA 3.0 by Sodacan

大紋章

エスカッシャンと、その周りを囲む様々な要素で構成されています。紋章の威厳や見栄の程度によって周りを囲む要素の数が違う感じです。

紋章の構成要素について

上の大紋章を例にとると、構成要素は以下のように分類することが出来ます。

いろいろな要素がありますが、大紋章だから全部入れなければ…ということはないみたいです。見栄と身の丈に合わせて選べば良い感じでしょうか。

クレスト

Royal_Coat_of_Arms_of_the_United_Kingdom_CrestCC BY-SA 3.0 by Sodacan modified by T&H

クレストは大紋章のほぼ一番上にある飾りです。ヘルメットやクラウンの上にいる動物であったり、羽飾りや翼のような装飾だったりします。紋章によっては頭(ヘルメット)から木が生えているものもありますが、紋章の構成要素はそれぞれ何かしら意味を持っているので、その持ち主にとってはそれほどに主張したい大切なものなんだと思います。

実際の例

CC BY-SA 3.0 by Eduardo Quevedo

クレストに羽飾りを使っている紋章です。

CC BY-SA 3.0 by Sodacan

ロンドンの紋章です。クレストには竜の羽を使っています。全体的に白と赤で構成されていてカッコイイです。クラウンはなく、リースがヘルメットの上にあるタイプです。

CC BY-SA 3.0 by Sodacan

カリブ海に位置する国、トリニダード・トバゴの紋章です。クレストは船の舵とヤシの木でしょうか。

クラウン

Royal_Coat_of_Arms_of_the_United_Kingdom_CrownCC BY-SA 3.0 by Sodacan modified by T&H

クラウンは、貴族にのみ許された装飾であり、国や時代によっては、身分によって細かくデザインが決まっていたようです。具体的に言うと、国王や皇帝が一番豪華なデザインになっています。ヘルメット無しでクラウンだけ飾るような紋章もちらほら見かけます。

また街の紋章では、クラウンと城壁を併せたような形の装飾をつけている場合があります。

さらに、クラウンの代わりに、もしくは併せてリースをつけることがあります。

実際の例

CC BY-SA 3.0 by Sodacan

クラウンが浮いている紋章の例です。ちなみにこれはハワイの紋章です。

CC BY-SA 3.0 by Chatsam + spedona

こちらは城壁のような形のクラウン?が装飾されている紋章です。

ヘルメット

Royal_Coat_of_Arms_of_the_United_Kingdom_HelmetCC BY-SA 3.0 by Sodacan modified by T&H

ヘルメットは、エスカッシャンの上にあることが多い装飾です。これもクラウンと同様、国と時代によっては身分によって厳格なルールがあるようです。正面か横を向いているものが多いですが、中には斜めを向いているものもあります。

さらに上述にように、ヘルメットなしの場合もあります。女性や聖職者など武人じゃない場合はヘルメットは相応しくないと考えたりするみたいですし、街や国でも使わない場合がしばしば有る気がします。一方、比較的珍しいものだとヘルメットが複数の紋章もあります。

実際の例

CC BY-SA 3.0 by JoshStudio

ヘルメットが斜めを向いている、比較的珍しい紋章です。

CC BY-SA 3.0 by Jacques63

1つのエスカッシャンにヘルメットが3つある紋章です。どのヘルメットもクレストが豪華です。

マント

Royal_Coat_of_Arms_of_the_United_Kingdom_MantlingCC BY-SA 3.0 by Sodacan modified by T&H

ヘルメットの頂部あたりから伸びるひらひらを総じてマントと呼びます。クラウンやリースで固定されているように描かれているものが多いです。

エスカッシャンの後ろを覆うように派手に広がっているものや、ヘルメットの周りにちょろっとあるだけのようなものがあります。布のようなもの、海藻のようなもの、さらには葉っぱをマントにした紋章なんてのもあります。

実際の例

CC BY-SA 3.0 by Tom Lemmens

エスカッシャンの横にサポーターがいないため、マントを思う存分広げた感じの紋章です。

CC BY-SA 3.0 by Jorge Compassio

カナダの紋章です。マントは控えめですが、カナダの国旗にもいる楓の葉でできています。クランがクレストの上にいますが、こういうのもアリなんですね。

エスカッシャン

Royal_Coat_of_Arms_of_the_United_Kingdom_EscutcheonCC BY-SA 3.0 by Sodacan modified by T&H

エスカッシャンは紋章の核をなす盾の部分です。盾の中には紋章の持ち主を特定させる重要な模様が入ります。時代や地域によって盾の形や、模様の入れ方に様々な手法がとられています。

あまりに仕組みや用語が複雑で、把握しきれないのでどんなものがあるのかと言う点で説明します。

まず、盾の形に関しては一例として下図のような種類がありますが、おそらくもっともっと多く、古フランス式とスペイン式の中間くらいの形もカーブの具合や縦横比が違ったりと、何種類も存在しています。

1. 古フランス式 (Old French)
2. フランス式 (Modern French)
3. オーバル (Oval)
4. ロズンジ (Lozenge)
5. スクウェア (Square)
6. イタリア式 (Italian)
7. スイス式 (Swiss)
8. イギリス式 (English)
9. ドイツ式 (German)
10. ポーランド式 (Polish)
11. スペイン式 (Spanish)

エスカッシャンの中身は、場合によっては分割や幾何学模様や枠等が入りつつ、模様が描かれます。この辺りを、チャージとか、フィールドとか、パーティションとか、オーディナリーと言うようですが、素人にはいまいち違いがわかりません。

分割数は特に決まりがなく、少ないものから2、3、4、5、6…と縦・横・斜め・曲線も使って分割されていき、数えきれないほど大量に分割された紋章もあります。また、分割の方法の中には、盾の中に盾を入れるインエスカッシャンと呼ばれる方法もあります。

実際の例

by P. Sonard

まるでモザイクのように大量に分割された紋章です。719個の紋章が組み合わさっているようです。

CC BY-SA 3.0 by Ipankonin

 

9分割の例です。中心にはインエスカッシャンが配置されています。

ガーター

Royal_Coat_of_Arms_of_the_United_Kingdom_Garter

CC BY-SA 3.0 by Sodacan modified by T&H

ガーターはエスカッシャンを囲むように巻かれるベルトです。紋章の持ち主に、何か特別に主張したい所属とかがあると使われることが多いと思います。

実際の例

CC BY-SA 3.0 by Heralder

金色の羊を吊るす金羊毛騎士団のガーターが巻かれている例です。

コンパートメント

Royal_Coat_of_Arms_of_the_United_Kingdom_CompartmentCC BY-SA 3.0 by Sodacan modified by T&H

コンパートメントは紋章の台座となる部分です。コンパートメントがある場合、エスカッシャンや、エスカッシャンの両隣にいるサポーターは、その上に据えられている感じになります。

コンパートメントがない場合、スクロールの上にサポーターを立たせるような場合もありますし、コンパートメントが紋章の大部分を占めるようなものもあります。

実際の例

CC BY-SA 3.0 by Sodacan

紋章に書いてある通り、オーストラリアの紋章です。コンパートメントがエスカッシャンの何倍にも広がっています。ヘルメットとマントはなしでリースとクレストがあるという、面白い形です。

スクロール・モットー

Royal_Coat_of_Arms_of_the_United_Kingdom_MottoCC BY-SA 3.0 by Sodacan modified by T&H

スクロールはしばしばエスカッシャンの下に据えられる巻物のことであり、モットーはスクロールに書かれる言葉のことです。モットーには最も大事にしたい言葉や家訓等が入ります。

また、上記のオーストラリアの紋章のように、単純に地名の場合もあります。

 

サポーター

Royal_Coat_of_Arms_of_the_United_Kingdom_SupporterCC BY-SA 3.0 by Sodacan modified by T&H

サポーターはエスカッシャンを両脇から支える守護獣のことです。左右のサポーターは別々のものを使うこともありますし、同じものを使うこともあります。鳥、魚、人、柱、生きものから無機物まで使われています。

実際の例

CC BY-SA 3.0 by Tinynanorobots

カリブ海に位置する国、バルバドスの紋章です。サポーターとして魚と鳥がいます。クレストも特徴的です。

by William Sancroft

ジャマイカの紋章は、サポーターが人間です。国民のイメージでしょうか。クレスののワニも良いですね。コンパートメントがないためサポーターはスクロールの上に立っています。

CC BY-SA 3.0 by Heralder

サポーターの位置に柱がたっており、さらにそこにスクロールがあります。こんな紋章もアリです。

その他

上記の要素の他にも、もっと豪華に、もしくは特徴的に見せたい時には、以下の様なやり方があります。

実際の例

CC BY-SA 3.0 by Sodacan

紋章の一番外側に天幕が有るパターンです。紋章の豪華さに磨きがかかります。
一番外側に大きく鷲を配置するのも1つの手です。ちなみにこれはオーストリアの紋章です。

CC BY-SA 3.0 by CarJunakaCg

ヘルメットを載せた紋章が斜めに傾いている場合もしばしばあります。理由はよく知りませんが、こういう見せ方が流行ったんでしょうか。

引用:三鷹の森ジブリ美術館 http://www.ghibli-museum.jp/

三鷹の森ジブリ美術館の紋章です。いままでの紋章にくらべると、絵柄が緩ければエスカッシャンの分割まで緩いです。

もっと紋章を見たい場合

これまでにいくつか実際の紋章を紹介しましたが、もっと見たいという人は、「紋章」や「Coat of Arms」でGoogleの画像検索やwikipediaの検索をすると大量に出てきます。

これまでに解説したような内容から外れているものも見かけますので、かなり自由に作っちゃっていい感じがします。

以下のリンクも参考にどうぞ。

「Coat of Arms」の検索結果 – Wikipedia

国章の一覧 – Wikipedia

また、東京ディズニーランド(TDL)やディズニーシー(TDS)に行くと、飾りとしていろんな紋章が飾ってあります。タペストリーとして飾られていたり、壁に描かれていたり、壁飾りとして飾られていたりしています。

もしTDLやTDSに行く機会があれば、装飾も気にしながら歩くとさらに楽しめるかもしれません。大紋章では、TDLのキングダム・トレジャー(お土産屋)や、TDSのフォートレス・エクスプロレーションの門にあるものが、格好良い飾り方をしています。TDLのシンデレラ城にはウォルト・ディズニー家の紋章が飾ってあるのも有名です。

ディズニーリゾートの紋章達
tdr_coa1 TDLのキングダム・トレジャーにある大紋章です。カラフルな半立体の壁飾りになっています。
tdr_coa2  キングダム・トレジャー店内の紋章のタペストリーです。フリンジ付のタペストー格好いいですね。
tdr_coa3  TDLのファンタジーランドの建物の屋根を眺めていても、紋章を見つけることが出来ます。こちらは屋根に直接ペイントしたような飾り方をしています。
 tds_coa1  TDSのフォートレス・エクスプロレーションの門にある大紋章です。なかなか大きいサイズで、石造りで渋く仕上がっています。
 tds_coa2  TDSでは紋章が描かれたタペストリーも飾られています。
 tds_coa3  TDSのフォートレス・エクスプロレーションに泊まっているガリレオ船にも大紋章が描かれています。これはデカい。
 tds_coa4  TDSのメインエントランス付近にも、紋章飾りがあります。大理石を彫った感じの飾り方をしています。